手術

昨日は、健康なのに自由に動けなかったので、ひたすら読書。浅田次郎のエッセイは、4割が競馬で、4割がその他のギャンブルで、暇つぶし程度にしかならなかった。「小説真夜中の弥次さん喜多さん」は、漫画も映画も見ていない俺としては、全く理解不能。ファンタジーだとしても納得いかない。ヤク中の思考をノベライズしたのかと思った。暇つぶしどころか、途中から苦行。食事は、味は悪くないけど、内容が老人ホーム風給食みたいなカンジで質素だった。看護婦さんに聞かれたので大盛りにしてもらったが、ご飯だけが大盛りでこのおかずでどう食えというのだろうと悩んだ。俺がベッドにいると、車椅子のおじいさんが5回くらい話しかけて来た。わざわざ俺のいる部屋まで来て自虐的な愚痴を溢していくので、萎え。スーフルという全身麻酔の人用の呼吸器強化マシンを使って、肺のトレーニングもした。リコーダー吹きの俺としては余裕過ぎて、苦痛。消灯が21時で、これも苦痛。ここから、一切の飲食が禁止された。
今日になっても、午後までは同じような生活。朝に風呂に入ってからは、ひたすら4コマ漫画を読んだ。後藤羽矢子が「耕してフォーリンLOVE」という作品を見つけて、ちょっとホッとした。桑田乃梨子の「だめっこどうぶつ」、大乃元初奈の「おねがい朝倉さん」辺りが好み。「貴美tallest」や「裸眼でGO!」は、キャラが立ってて良いと思った。みんなが昼食を食べようとする頃、俺は点滴から生理食塩水で水分補給をした。実は、人生初点滴。何だかんだ言っても、基本的には健康で生きて来た事を感じた。痛みは注射器と同じくらいだけど、皮膚が突っ張った状態が持続するので妙な感覚。朝食どころかお茶も飲めないので、のどの渇きは癒せない。同じ部屋の方に、うがいをすると良いとアドバイスをもらった。
13時頃から2つめのパックに替えて、歩いて手術室に移動。自分の力で手術台に上ったら、右手をまな板に乗せられた。右手には点滴が付いていて、患部は左手首。危うく医療ミス。不安も解けぬまま、先生方が来て、点滴から麻酔が入っていった。1秒目は何ともなくて、2秒目で脳みそのまわりでピリピリシュワシュワと炭酸がはじけるような感覚があり、3秒目には目の前の顔が母親に変わっていた。全身麻酔、すげぇ。しばらく、ママンや看護婦さんと話していたら、次の手術を終えた先生が説明に来た。手術は2時間弱で、ガングリオンは親指の方まで伸びていた上に、一部の神経とは完全に癒着していたのでそこは剥離を諦めたという、それなりの長丁場。でも、痺れているとは言え、指は動くので成功。先生、ありがとうございました。しかし、その時の俺は、意識のないうちにチンコに刺されたカテーテルに動揺。浣腸バージンは奪われなかったけど、尿道バージンは奪われました。未来の女王様ごめんなさい。意識がハッキリして来たので、明日まで付けていて良いと話す看護婦さんに頼み込んで、カテーテルを外してもらった。この感触はとても気持ち悪く、痛いより何より、一番嫌な感覚だった。慣れれば尿道プレイでも気持ち良くなれるんだろうか、…うぅむ。次に襲って来た苦痛は、空腹。全身麻酔の割には、かなりスッキリと意識が戻ってしまった方らしく、これも頼み込んで水をもらった。あぁ、口に何か入ってくるのって、気持ちいい。
そのまま、ナースステーションの隣の監視部屋で寝た。